九州ええもん見っけ隊
(更新)
宮崎の切り干し大根と佐賀の「天山 すだち酒」が風を纏って旨味の饗宴!
九州の“ええもん”は、ただ美味しいだけじゃない。
そこには必ず、土地の風土と、人の知恵と、時間の積み重ねがある。
今回届いたのは、佐賀・天山酒造の「天山 すだち酒」。
そして合わせるのは、宮崎・田野町の冬の風が育てた切り干し大根だ。
一見すると、まったく別の存在に思えるこの二つ。
だが、グラスを傾け、鍋を火にかけた瞬間——
その距離は、一気に縮まった。

正直に言うと、最初は“日本酒ベースの何か”を想像していた。
米の旨み、穏やかな香り、そんな先入観を抱いたまま待っていたところ、まいぷれ佐賀から届いたのは「すだち酒」。
そういえば、「ちょっとクセのある酒を送ります」と言われていたのを思い出す。
栓を開けた瞬間、立ち上るのはすだち特有の青く爽やかな香り。
グラスに注げば、透明感のある液体が光を反射する。
一口含むと、
まず感じるのは、すだちのキリッとした酸味
続いて、果皮由来のほろ苦さ
そして、後味は驚くほど軽やか
アルコール度数は 8%。
主張しすぎず、料理の邪魔をしない。
これは「飲むための酒」ではなく、「食事と一緒に完成する酒」だと直感した。

では、何を合わせるか。
頭に浮かんだのは、宮崎市の北東、田野町の冬の風景。
九州山地・鰐塚山から吹き下ろす、冷たく乾いた強風——“鰐塚おろし”だ。
この風を利用して作られるのが、田野町の切り干し大根。
「大根やぐら」と呼ばれる竹製のやぐらに、大根がずらりと並び、真っ白な大根が風に揺れる光景は、冬の風物詩でもある。
強い風で一気に水分が抜けることで、
⚫︎甘み
⚫︎旨み
⚫︎香り
それらがぎゅっと凝縮される。
切り干し大根は、いわば“風の記憶をまとった大根”。
この滋味深さなら、すだち酒の酸味と真正面から向き合えるはずだ。

切り干し大根の巾着おでん、という選択…切り干し大根といえば煮物。
だが今回は、もう一段階、奥行きを持たせたい。
そこで選んだのが、巾着おでん。
油揚げの中に詰めるのは、戻した切り干し大根だけではない。
そこに卵を加えることで、
◎切り干し大根の繊維質な食感
◎油揚げのコク
◎卵のやさしい甘みとボリューム--この三層構造を作り出す。
だしはあくまで控えめに。
主役は切り干し大根自身の旨み。
時間をかけて、ゆっくり、じっくり——
油揚げがだしを吸い込み、切り干し大根がふくらみ、卵まで味が染みていく。
鍋の中で進むのは、ただの調理ではない。
素材同士の対話だ。

ぐつぐつと煮えた鍋から、巾着をそっと引き上げる。
箸で割ると、じゅわっと染み出すだし。
まずは一口。
柔らかく戻った切り干し大根が、
噛むたびに旨みをじわじわと放つ。
油揚げのコクがそれを包み込み、
最後に卵のほくっとした食感が追いかけてくる。
ここで、すだち酒を一口。
—— 空気が変わる。
すだちの酸味が、切り干し大根の甘みを引き上げ、ほろ苦さが油揚げのコクをスッと切る。
口の中が一度リセットされ、また次の一口を呼ぶ。
食べては飲み、飲んでは食べる。
そのたびに味の表情が変わる。
これは「合う」ではなく、一緒に食べて初めて完成する関係だ。
最後に、だしと切り干し大根の余韻が残る口に、すだち酒を少し多めにゴクリ。
思わず、声が漏れる。
「あぁ……美味しい」

すだちも、大根も、姿を変えながら日本の食文化を支えてきた食材。
佐賀の柑橘と、宮崎の乾物。
それぞれの土地の風と人の知恵が、ひとつの食卓で出会った。
派手ではない。
だが、静かに心に残る。
そんな“ええもん”の出会いに、今日も感謝。
宮崎の名産【切り干し大根】

写真はイメージです。
天山 すだち酒
天山酒造株式会社
所在地:佐賀県小城市小城町大字岩蔵1520番地
電話:0952-73-3141
ジャンル:清酒、焼酎、リキュール製造販売
佐賀駅→小城駅(JR唐津線下り)約16分
営業時間(9:00~17:00)
6月~8月(9:00~16:00)
※取材時点の情報です。掲載している情報が変更になっている場合がありますので、詳しくは電話等で事前にご確認ください。